線文字Aの女

血と、ローズダストの色彩が濃く染みた粗い石英の粒子。そしてジルコンを含んだ研かれた花崗岩の階段がつめたい光沢をともなって果てしなくオリンポスの山の頂から薄紫の色に滲んだ淡い雲の間にのびている。エーゲの海を見おろし、輝かしい青に散る島々の宮…

カレーの庶民

たった今、水とルーだけのカレーをアルマイトの鍋で作ってる途中だ。煮えたら、茄子とキャベツの野菜炒めをそこへぶち込んでやるつもりだが、男の料理だし、丁寧に作るつもりなど初めからまったくない。肉がないので竹輪と蒟蒻を指でちぎって鍋に入れた。白…

チビけた鉛筆の唄

かたく凍った夢を砕いて画用紙に宇宙を描いて暴れだす果てのない星々の海は瞬き、チビけた鉛筆が一本煌く銀河を縦横無断に奔るつめたく凍った言葉を融かして原稿用紙に文字を紡いで歌いだす美しい旋律は心の深淵をなぞり、チビけた鉛筆が一本壮大なシンフォ…

アフリカ鍋

アフリカ鍋にはキリンさんの首と頭がまるごと入っているそういうと、動物愛護協会からクレームが来るかもしれないキリンさんも可哀そうだが、それならなんで戦争がなくならないんだアフリカ鍋には怨みがたっぷり入っている動物だけじゃないにんげんのこども…

名もなき夏の島にて

atsuchan69 真下に拡がる海原は厳しく削られた岩の入江を包み、とうに半世紀を過ぎた今しも汽笛の鳴る港へと煌めく漣(さざなみ)を寄せて夏の賑わいが恋人達とともに古い桟橋を大きく揺らして訪れるそろって日に焼けた肌や水着姿の往きかう坂道だのあの日、キ…

スヴァスティカ

○ 。 。 ゜ 〇ぶくぶくと発酵し、白く泡立ったパロールがプチン、パチンと弾ける刹那闇に包まれた沈黙の森へ微少の琥珀金を含んだ飛沫を散らす、ランゲルハンス細胞の 突起煮えたぎる夜と、瀝青の黒に映える 「ワン・センテンス/椀子蕎麦俯瞰するイメージは…

ミリンダ/メリンバ

ミリンダ/メリンバ /夏の山 とおく遥かに海の碧(あお) 白いさざなみ 風の吹く 寂れた町へも吹き降ろす ちぎれた葉っぱは飛んでゆく//ミリンダ/メリンバ /乗る葉っぱ とおく遥かに荒れた空 雷ゴロゴロ 光る音 野山へにわかに蔽う雲 風はたちまち秋の色…

漁師だぜ、とりあえず今日も

でっかい鰤のアラとぶあつい銀杏切り大根の入った湯気のたつ味噌汁を啜って海苔と胡麻塩の握り飯を食う あー、うめぇなあ海鳴りの音を風がさらう子どもたちはまだ眠っていて浜辺はこんなにも寒いけど今から沖へ出るんだ ぶぉん、ぼんぼんぼんディーゼルの煙…

Mein Sohn, was birgst du so bang dein Gesicht?

錆びたトタンの切れ端を腹に巻いた彼には、まだ、顔がなかった。二十もすぎて今更もう顔なんて要らないよォ、という。が、顔がないので当然、話すのにも口がない。にもかかわらず、「家に住むのに屋根がナインだよ」とでも言いたいそぶりで小指を一本失った…

暁のエクスタシー

細身の女は、恐ろしく小さな核ミサイルを抱いてなぜだか不思議と人通りの少ない一匹の異様に痩せた野良猫の、か細い瞳で睨んだ薄汚い裏通りに幾年月も在り続けたベンチさえ置かれていない露天のバス停に佇み、小雨の降りしきる一日を当て所ないジプシーのよ…

歴史の外側

スムーズに話そう、あいにくと私の前にいる逃げ出した夜は詩人で難聴気味だったたとえば、私の友人であるアナトール・フランスの書いたやつを読んで【隠された表】と【真実である裏】を交互に推測し、幾度でも検証を重ねて古代ローマがユダヤから彼らの救い…

妄想の海の日本人

そーぞーりょくは、夢の力だ。そーぞーすることは、アートである。 さて、ある筋のじょーほーでは、忍者はすでに平安時代(あるいはそれ以前)から全世界に諜報ネットワークを張りめぐらせていたという。そのなかには当然「くノ一(くのいち)=女忍者」もいて一…

ドカジャン

ドカジャンというのは、厳冬期に野外で働く建設現場の人たちが着ているのをよく見かけるタイプの、裏地がボアになったとても軽くて暖かい作業用ハーフコートの俗称だ。その昔、TVドラマ「北の国から」で田中邦衛も着ていた伝説的アウターでもある。生地は…

大好きなスンドゥブ・チゲ

ええと韓国料理のスンドゥブ。これってコチジャンスープの湯豆腐って言ってもいいのかな。それとも「ちとせ」みたいにいっぱい肉の入っていないキムチ味の肉すいって説明してもまんざらハズレではないと思うけど。とか、マーボ豆腐に近い感じもするけど、あ…